疾風怒濤の食生活・読書日記

藤田香織,
「だらしな日記」,
ISBN 4-344-00194-X,
幻冬舎,
2002年6月10日 第1刷.

×月×日 FIFA納豆に怒る

 角川書店で,社長が麻薬がらみの容疑で逮捕されるという事件があった。あれはいつだったか。その際,当時の社長の片腕であった敏腕編集者は角川を去り,新しく出版社を起こしたという。それが今の幻冬舎である。最初はどうなるかと思っていたら,あれよあれよという間にヒット作を次々とかっ飛ばし,今では潰れた少女漫画誌と青年漫画雑誌をかき集めて「幻冬舎コミックス」なる別会社まで擁するまでになっている。大したものである。
 それはともかく,その幻冬舎のWebマガジンで変な連載が始まった。その名も「だらしな日記」。最初は気にも留めなかったのだが,食い物の写真がうまそうだったのでついつい文章も読んでみたらこれが面白い。メシの写真があって,その日の出来事が文章で綴られ,最後にはその日に読んだ本の感想が短く的確に紹介されている,という体裁であった。
 というわけで毎月2回,1日と15日の更新を楽しみに待つようになっていたのであった。
 話は全然違うが,この上の写真は,いつも買い物をしてちまちまとポイントを貯めている近所のスーパーで売っていたFIFA World Cup公式納豆である。サッカーに興味がないどころか,会場のすぐそばが職場である私は迷惑すら被っていたのである。従って,むかっ腹が立ったのだ。で,成敗すべく1パックを購入して3日で食ってやった。ざまあみろ。

▽月□日 ニプレス代わりにガムテープはまずかろう

 何の話だったっけ・・・。そうそう「だらしな日記」。その連載が終わって寂しいなあと思うまもなく,それがまとまって単行本になったのだ。買わねば! 買わねば! と,いつも雑誌を頼んでいる職場の売店を覗いたらこれが一冊だけ並んでいるではないか。見るが早いかさっさとレジへ持って行ったのは言うまでもない。
 読み始めたらこれが止まらない。いつまで経っても止められない。仕事の準備が食事の支度が風呂を沸かさねば大小便を排泄せねばならないのに,結局,夜更かししつつあっという間に2段組491ページの本を読了してしまったのである。
 翌日は著者以上にだらしなく情けない結果になったのは言うまでもない。ちなみにこの写真は私の朝の定番メニューである。3分でできあがる超簡単納豆ご飯である。ステキでしょ? テーブル奥の惨状については俺がよく分かっているから触れないでくれ。

○月◎日 やっぱりチーズとバターと肉の食い過ぎだと思う

 にしてもだな,この著者の食いっぷり飲みっぷり読みっぷりは凄い。読みっぷりってのは,書評でメシを食っているのであるか当然であるけど,とにかくメシと同様,ものの見事にアカデミックのかけらも教養を高めようという配慮がない。普通,書評ってばさ,どっかの大学の先生とか作家だとかが,「ほーら私はこんな本でも読みこなせるんだよ〜」っつって自慢してしまうことがよくある。エンターテイメント方面なら,あまり一般人が読まなさそうな,初版絶版作家の入手困難な単行本なんぞを取り上げて,「ばーかめ,一般ぴーぽーにこれが読めるか?」という態度が見え見えの,嫌みったらしい評論家の文が載ったりする。
 しかしまあ,わしだって人のこたぁ言えない。なんとか自分の存在価値を高く見せたい。「人にはちょいと奉られたい」という欲求があるから,ついつい他人と違うところ,優越感を持てそうなものを見せびらかしたくなるモンなのだ。それは極めて人間的な一面である。それがこの著者,藤田香織という私と一つ違いの殆ど同い年の人には全く感じられない。即ち,「私は読みたいのよ読みたいのよ読みたいのよ」で突っ走っているだけのように思えるのだ。時には仕事として指定された本も混じるようであるが,それでも読むことに対する飽くなき情熱がほとばしり出ているようで素晴らしい。「だらしな日記」の書名の本になった「更級日記」を途中で挫折したと正直に告白している所なんぞナイスだ。ちなみに私はちゃぁんと読んでいる。高義ご推薦の羽崎安実(今は羽崎やすみ名義)著「更級日記」(角川書店)だ。もちろん,「NHKまんがで読む古典」シリーズの一冊である。藤田さんもこれを読むとよろしいかと思います。きっと読めますよ。
 関係ないが,私は最近,金銭的にピンチで,それもこれも税務署と自動車と数値解析シンポジウムが悪いのであるが,食費を(なるべく)切りつめている。そこで夕飯や朝飯が余ると必ずそれを弁当にして持っていくようにしている。この写真はある日の弁当であるが,きんぴらゴボウ(自分で作ったのよ)と目玉焼き,ラッキョの甘酢漬け,それと写っていないがオレンジを丸ごと一個,添付してある。藤田さんもこーゆー程度の量の食事とメニューであれば今頃ダイエットに血道を上げる羽目にならなかったと思うのですが・・・。

△月×日 トイレの後には手を洗うべきでしょう

 本書のもとになった連載時に寄せられた感想に,「だらしないけどおもしろい」というのがあったそうだが,そりゃ違うだろ。だらしない「から」おもしろいんじゃないか。そのだらしなさはちゃんと理由があって。こんだけ仕事しまくっていれば当然でしょう。笑いのオブラートで包んではあるが,ハードワークから来るストレス解消の一環として,食って飲んで書いてというサイクルを繰り返しているのだろう。そりゃ,今時の働き盛り世代がですな,ストレスを感じないような仕事をしていたら,あんた,間違いなく老後は悲惨ですぜ。年金なんぞ期待する方が馬鹿だろうよ。しっかり働いてしっかり稼いで,末は冷暖房完備の有料老人ホームに入所出来たら大ラッキーだ。目指せ老人憩いの家。その日が来るまで入所費用をしっかり稼がにゃ。今の勤労世代にフジタを笑う資格なんぞないのだ。だらしな部屋の惨状にはさすがに大爆笑したが,こっちだって人のこたぁ言えないのだ。独り者の労働者で,部屋が綺麗とかBMI値が標準だとか抜かす奴は絶対に仕事してない。断言する。本書を読んで笑っている奴には二通りいて,嘲笑しているのは絶対にこの仕事してない健康馬鹿人間,爆笑しつつ悲哀を隠せないのが私も含めた正しい労働者諸君である。
 でも,トイレの後には手を洗うべきでしょうなあ。男はち○こがあるから汚いとか言っているらしいが,自分の息子を汚いという母親はおらんだろう。それと同じで自分のムスコを汚いと思う男もおらんのである。衛生面から,というより,人前でも,事をなした後で手を洗わないという普段の習慣が出てしまってはまずいだろう。私が手を洗うべき,と主張するのはそこにあるのだ。ちなみに上の写真は私がいつも手を洗っている自宅のトイレである。
 ・・・だらしな日記の体裁をまねて書いてみたつもりであるが,脈絡のない文章と写真の羅列になってしまった。やっぱり私も体脂肪計を買っておく必要があるようである。


by Tomonori Kouya

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