税金で食う飯はうまいらしい

中島らも,
牢屋でやせるダイエット,
ISBN 4-413-02163-0,
青春出版社,
2003.8.1 第1刷.

 懲役10年,執行猶予3年。これがおれに言い渡された判決である。
 ありがたいことに執行猶予がついた。
 (P.186「終 判決を受けて」より)

 中島らもが帰ってきた。逮捕直後に閉鎖していた公式ページも復活し,バンド活動も再開。判決が出るまでに,さすがに連載は全て打ち切りとなったが,出版されていた単行本・文庫の流通が差し止められるということもなかった。これは著者が赤裸々に自身の薬物体験を語っていたからに他ならない(詳しくは「アマニタ・パンセリナ」をお読み下され)。人間,日頃の行いが大事であることを,改めて知らしめてくれたのである。
 さて「賢すぎるが故に辛そうな」らもさんは,判決が出るまでどのようなお勤めをはたしていたのか。本書はその一部始終を語ってくれる,著者復帰第一作である。全般的には今ひとつ物足りなさが感じられるのだが,それはまだ復帰して間もない頃に執筆されたからで,その体験が「死後硬直」の状態にあるせいだと想像する。「発酵」するにはまだ時間が必要だろうし,それが完了したとしても,糸引き納豆のような体験を醤油やカラシの味付けなしで提供できるか,一般向けとしては難しいと言わざるを得ない。味付けした後,フィクションという「ホカホカご飯」にぶっかけてこそ,おいしく食することが出来るのではないか。ちょうど連載も途切れたことであるし,本書は発売早々増刷が掛かったようなので,生活にも余裕が出てくるだろうから,この時期を利用して「おれの今後の作品」を仕上げて頂きたい。ああ,全く私ってば,娑婆に出てせっかく回春した「おれのナニは再び沈黙」してしまった不健康な作家に群がる,由緒正しきらもファンなのだなあ。うっとり。
 さて,中島らもその人については「アマニタ・パンセリナ」でさんざん語ってしまったので,ここでは本書に記された内容とWeb上の記事から一連の事件の流れを大まかに記しておく。

1. 2003年2月4日(火) 正午頃,厚生労働省近畿厚生局麻薬取締部の捜査官による家宅捜査が行われ,同日午後2時30分に大麻取締法違反の容疑で逮捕された。
2. 即日同部内にある留置場に一泊。
3. 5日から,取り調べのため大阪拘置所(注)に21日間,未決拘禁者として拘置された。
4. 26日(?)に「大麻取締法違反(所持)という罪状で,立件起訴」。
5. 即日保釈,自宅にて一泊。
6. 翌日(27日?),麻薬取締部から任意取り調べ呼び出し,長所事実の確認のみで終了。
7. 翌日(28日?),ある病院の精神科に入院。
8. 4月14日(月),大阪地方裁判所にて第一回目公判が開かれ,検察側から「懲役10ヶ月」を求刑される(日経新聞関西版)。被告人は起訴事実を認めるも,「大麻開放論をぶつ」(報知新聞)。即日結審。
9. 再度入院するも,ストレス(本人談)によりアルコール依存が高まったとして,退院。
10. 5月26日(月)に「執行猶予3年・懲役10年」という判決が下される(ZAKZAK)。

 逮捕から判決が出るまで正味4ヶ月で,かなりのスピード判決だったことがわかる。初犯であったこと,起訴事実を素直に認めたことと,今後社会生活を送るにあたって家族のサポートが期待できること,等々が考慮された結果,短期間で結審し,執行猶予が付いたものと思われる。

 さて,3週間程度の拘置所暮らしは本人にとってどんなもんだったのか,詳しくは本書に記されているので,ここではあえて書かないことにする。が,一言だけ添えておくと,本書のタイトルは内容に偽りありなのである。逮捕前の著しい不健康状態でやせ細っていたのが,規則正しい健康的な生活と「米が七割に押し麦が三割の麦飯」によって太ってしまっているのである。これないけない。書店に並べる時には,きちんと健康法の棚に収めるべきである。

(注) 本文中では「都島」拘置所となっているが,大阪市都島区にあるのは「大阪拘置所」である。


by Takayosi Kengo

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